自分の過去を否定していると、将来への不安や焦りが増幅する
将来に対する強い不安がある人の発言を観測する機会がありました。
よくよく話を聞いてみると、過去にはブラック企業で働いており、自分がやりたい仕事ができず、転職に有利な経歴も得ることができなかった、と。
年齢的にも30代前半なので、将来何者かになるためには、今この時がラストチャンスだから、自分がやりたい仕事に就くことを重要視したい、と。
本人にとって、過去経験したことは、受け入れがたいものであるようでした。
自分は他の人よりもやりたい仕事に対する知識や理解、熱意ややる気もあるのに、他の人がその仕事にアサインされて、自分は別の仕事にアサインされる。
アサインされた別の仕事は、例えば転職活動をしている時に「こんな仕事してました」と他者に語った時に、見栄えのする仕事ではない。
所属していた企業も、パワハラまがいの発言をしてくる高圧的な上司と、新人を育てる気がない完全放置プレイの職場環境などなど。
本人にとっては、自分の人生における汚点という認識なのだろうと思います。
心のトラウマや傷であり、周りの環境に圧倒されて自分の人生を生きることができなかった暗黒時代の思い出という感じです。
で、これらの過去によって、自分の人生という時間を浪費してしまった。
それでも、自分にはやりたい仕事がある。
そのためには、今時間を無駄にすることはできない。
だから、目の前の仕事が自分のやりたい仕事かどうか、自分の将来にとって有益であるかどうかを素早く見極めて、方向性が違うならすぐにでも他の仕事に移りたい。
会社が自分の考えを認めてくれないなら、転職も辞さない。
ざっと振り返るとこんな感じでした。
で、これらの話を後からぼんやりと振り返っていたのですが、どうも自分が過去経験したことに対する態度と、将来への感情というのはリンクしていそうだな、という気がしたので記事にしてみた次第です。
結論は、タイトルの通りですが、自分の過去を否定している度合いが強ければ強いほど、将来に対する不安が大きくなる、ということがいえそうです。
自分の過去を否定している人の発言を観察すると、根っこにあるのは「自分は○○を失った」という喪失感覚なのだろうと思います。
他の人から評価される経歴を得る機会を失った。
やりたい仕事につく機会を失った。
スキルを身につける機会を失った。
この喪失感覚から、色々な感情が派生してきます。
自分は会社などの環境から大事にされない存在であるという自己肯定感の低下。
自分はいつも選択に失敗する、また失敗するのではないかという選択と決断に対する不安。
環境から虐げられてきたという被害者意識。
○○を失ったという喪失感覚を穴埋めするための欠乏マインド(ようするに"くれくれ君"になるということ)。
自分はこんなに大変な過去を経験してきた被害者でかわいそうな立場だから、他人は自分に優しくすべきだし、自分の考えを尊重すべき、という自己愛の肥大と甘え、依存心。
周りが自分の都合を考えてくれないなら、自分も他人の都合を考える必要はない、という自己中止的なわがままマインドと、自分の都合を優先するためなら他人に迷惑をかけてもよいという倫理観の低下。
無駄にした時間を取り戻すために早く結果を出したいという焦燥感、焦り、いらだち。
自分の過去を否定したところからくる上に書いたような感情、精神状態では、人生が好転することはないだろうと思います。
ではどうすればいいか。
過去に起きた出来事は変えることはできませんが、過去の出来事に対する解釈、捉え方、考え方は変えることができると思います。
過去の出来事を自分の人生における汚点として考え否定して認めないのではなくて、その出来事から自分は何を得たのか、何を学んだのかを考えてみる。
これはやってみると分かりますが、人によってはめちゃくちゃにしんどいと思います。
何しろ、今まで否定してきた過去から得たもの、学んだものを考えるという作業ですから、今までの物事の見方とは180度反対のことをする、ということになります。
過去に味わった喪失感、欠乏感、他人や環境に対する不信感、挫折、絶望、失望を今の自分が見方を変えることによって、過去の出来事から得たもの、学んだことを考えて、喪失感を埋めてあげることで過去の自分を癒してあげる試み、といえるかもしれません。
過去を無駄な時間にして現在を欠乏感に苛まれながら過ごすのか、過去を有益な時間にして、あの出来事があったから現在の自分があるといえる見方をして現在の自分の満たしてあげるのか。
それは現在の自分の物事の捉え方次第です。
過去を否定している人と肯定している人の過去・現在・未来に対する考え方の違いを書いてみました。
〇過去を否定している人の過去・現在・未来
過去の否定→現在の欠乏状態→未来の理想像(こうならないと幸せではない)
〇過去を肯定している人の過去・現在・未来
過去の肯定→現在の満たされている状態(この時点で幸せを感じられる)→未来の理想像(現在も幸せだけど、未来こうなっていたらもっと幸せ)
過去を否定している人は、今不幸せなので未来の理想像に到達しない限りずっと不幸せな状態が継続することになります。
だから、何としてでもはやく未来の理想像にたどり着こうとします。
一方で、過去を肯定している人は、過去を肯定することで過去から学んで得ているものがあるので、現在の欠乏状態はなく幸せを感じることができている状態です。今の幸せという土台があるので、焦りや不安は少なく、現在の状態を土台としてさらに未来の理想像に向けて一歩一歩着実に進むことができます。現在の欠乏状態がないので、焦りやいらだちなども非常にすくなくなります。
未来をよくしたいのなら、未来だけを見るのではなくて、過去と向き合うことが必要になります。
過去は自分の土台です。
過去と向き合うことで、自分の考え方に原因があったことに気が付くことができます。
考え方が変わることで現在の選択が変わり、未来が変わります。
過去を否定して向き合うことを拒否していると、自分の考え方を改めることはなくなり、現在の選択も変わらないので、未来も変わりません。
未来を変えるためには過去と向き合うこと。
そして過去から学んだことを現在の自分の糧とすること。